崖観音・那古観音・安房神社・高家神社 御朱印めぐり
南房総は、海と山に囲まれた地域で、海の幸や関東で一足先に春を迎え、正月明けから花めぐりでにぎわうフラワーラインに代表されるように、花摘み客でにぎわう所です。
この記事は、春の花が終わった5月中旬、館山でレンタカーを借り、館山市崖観音から那古観音、房総半島最南端の碑がある野島埼灯台を通り、我が国唯一の料理の神様を祀る高家神社などをめぐる御朱印めぐりを紹介しています。
大福寺 (崖観音)
大福寺は、千葉県館山市にある真言宗智山派の寺院であり、山号は舟形山です。
境内の東京湾を望む舟形山の中腹には、岩に張り付くように建てられている朱塗り
の観音堂があります。
中には“磨崖仏”として十一面観音像が刻まれており、通称“崖観音”と言われています。
寺の縁起によりますと、この本尊は、養老元年(717)に行基上人(668~749)が東
国行脚の折に神人の霊を受け、地元漁民の海上安全と豊漁を祈願して、山の岩肌の
自然石に十一観世音菩薩を彫刻したと言われています。 その後、慈党大師(794~
863)が当地に来錫した折に堂字が建設されたそうです。
いただいた御朱印には、大慈悲の磨崖仏“十一面観音様”がいらっしゃるお堂“十一
面大悲殿”と書かれています。
那古寺
那古寺は、千葉県館山市にある真言宗智山派の寺院であり、山号は補陀洛山です。
本尊は、千手観世音菩薩、坂東三十三観音霊場の三十三番、結願寺になります。
創建は、養老元年(717)、開基は行基と言われています。
緩やかな参道を進みますとすぐに仁王門、その先には江戸時代に建てられたケヤキ作り
の多宝塔(写真上)があり、その先が観音様を祀る本堂になります。
本堂からは、那古山山頂まで遊歩道が続いています。途中、潮音台と呼ばれる眼下に錦
ヶ浦を望む(写真下)絶景の展望台には、古い時代に和泉式部のファンが建てたのでは
と言われる和泉式部の供養塔がたっています。
いただいた御朱印には、大慈悲の観音様がおられるお堂“大悲殿”と書かれています。
安房神社
安房神社は、館山市にある安房の国一宮に列せられる神社です。
社の由緒によりますと、安房神社の創始は、今から2670年以上も前に遡り、神武
天皇が初代の天皇として即位された皇紀元年(西暦紀元前660年)と伝えられている
そうです。
神武天皇の命を受けた天富命は、肥沃な土地を求められ、最初は阿波国(現徳島県)
に上陸、そこに麻や穀(カジ=紙などの原料)を植えられ、開拓を進められました。
その後、天富命一行は更に肥沃な土地を求めて、阿波国に住む忌部氏の一部を引き
連れて海路黒潮に乗り、房総半島南端に上陸され、ここにも麻や穀を植えられまし
た。この時、天富命は、御自身の先祖にあたる天太玉命と天比理刀咩命をお祀りさ
れたのが安房神社の起源となるそうです。
なお、天太玉命は日本における全ての産業の総祖神として崇敬されている神様です。
境内の下の宮(写真上)には、天富命が祀られ、本宮である上の宮(写真下)には
天太玉命が祀られています。
野島崎灯台
安房神社からフラワーラインを東へ進むと房総半島最南端の野島崎、そこには、日
本最古の八灯台の一つ“野島埼灯台”が建っており、周囲を20分程度で散策できる公
園になっています。
能蔵寺
野島崎灯台からフラワーラインを千倉方面に進んで行ったところに能蔵寺があります。
能蔵寺は、南房総市千倉にある真言宗智山派の寺院で山号は青龍山です。
『東国花の寺百ヶ寺』の一つであり、南房総のお寺らしく、四季折々の花に囲まれ
た癒しのお寺として有名です。とりわけ、7,8月には、蓮池一面に蓮の花が咲き誇
り、毎年7月末には、「観蓮会」も開かれているそうです。中でも昭和26年に東京
大学の大賀一郎博士によって発掘された“大賀蓮”は、およそ今から2000年前のも
ので、世界最古の蓮になるそうです。
訪れたのは5月中旬、大賀蓮は清楚な葉だけを水面に広げていました。
仏典に「草木悉皆成仏」とあるように、花にも成仏するよう願う機会があってよい
との考え方から、こちらのお寺では、境内に花観音を建て花の供養を行っています。
御朱印には、“花”と“観音様”を表す梵字が書かれているようです。“花観音様”とい
うことだと思います。
なお、参拝させていただき御朱印をいただいただけですが、気さくな奥様がいらし
て、お茶までいただき、またおみやげに花の寺;能蔵寺をイメージした陶器製の箸
置きや大賀蓮の絵ハガキまでいただいて帰ってきました。
高家神社
高家神社は、能蔵寺から車で5分ほどの所、南房総市千倉にあります。
日本唯一の「料理の祖神」祀る神社として料理関係者や醤油醸造業者などから崇敬さ
れている神社です。
社の由緒によりますと、主祭神“磐鹿六雁命”は、第12代景行天皇の安房行幸の折、
釣り上げたカツオとハマグリを膾にして天皇に差し上げた所、その料理の技に称賛
をいただいたとのことです。
以後、代代子孫は、皇室の食事を司るよう賜ったということです。
なお毎年5月10月、11月には“包丁式”が行われ、平安時代の宮中行事を再現した古
式豊かな包丁と箸のみで魚をさばく技が披露され、日本料理の伝統をかいま見るこ
とができるそうです。
境内には、包丁塚もあり、毎月17日に“包丁供養祭”が行われています。
いただいた御朱印にも、“料理祖神”と書かれています。
小松寺
小松寺は、高家神社から西へ車で10分ほど、同じ千倉にある真言宗智山派の寺院で
す。山号は檀特山、本尊は薬師如来になります。
寺の歴史によりますと開山は養老2年(718)、開基は役小角(役行者)によると伝
えられ、また延喜20年(920)に、国司安房守小松民部正壽により再建が図られ、
薬師如来が祀られたそうです。
房総の山中にたたずむ1300年もつづく古刹、その風情が感じられるお寺が小松寺です。
小松寺には、カエデの大木が多く、写真は5月中旬、新録に覆われていますが、秋
の紅葉が美しい寺として有名です。なお小松寺は、東国花の寺百ヶ寺千葉13番にな
っています。
いただいた御朱印には、“観世音”と書かれています。
石堂寺
小松寺から北へ車で20分ほど、南房総市石堂にあるのが天台宗のお寺、石堂寺です。
山号は長安山、本尊は十一面観世音菩薩、創建は神亀3年(726)、聖武天皇の
勅願を受けて行基上人が開いたと伝えられています。
堂宇は、火災から再興を果たした1500年代に建てられたものが多く、本堂(写真
上)や多宝塔、薬師堂(写真下)などは重要文化財に登録されています。
石堂寺は、東国花の寺百ヶ寺千葉14番に登録されている寺院です。境内には四季
折々の花があり、散策も楽しめます。特に梅、桜の木が多く、梅林の先には、花供
養のために“花観音”が建てられています。
いただいた御朱印には、観音様がおられる“大悲殿”と書かれています。