出羽三山は、山形県庄内地方に広がる羽黒山、月山、湯殿山の総称で、古くから山岳修験の霊場として知られている所です。
開山は1400年前、第32代崇峻天皇の皇子である蜂子皇子が、三本足の霊鳥に導かれ羽黒山に登拝し、苦行の末に羽黒権現を感得、さらに月山、湯殿山と三山を開いたのが始まりと言われます。
江戸時代までは、神仏習合の権現を祀る修験道の山でした。明治以降は神仏分離令により神山となりましたが、今でも羽黒派古修験道は継承され、現在でも山岳信仰の山として、多くの修験者、参拝者を集めています。
羽黒山 (出羽神社)
羽黒山参詣道の入り口近くにある「いでは文化記念館」の駐車場に車を止め、
隋神門から羽黒山に入ります。
ここから出羽三山の神々を合祀した三神合祭殿のある羽黒山山頂まで、ミシュラ
ン・グリーン・ガイド・ジャポンで三つ星に評価された2446段の石段と3の急坂から
なる1.7キロの杉並木の参道が続きます。
隋神門を抜け、下り坂の石段である継子坂を下りると祓川にかかる赤い欄干を持
つ神橋が見えてきます。この祓川は月山に源流をもち、昔、出羽三山に参拝する
人は全て、ここで身を清めた場所だそうです。
なお祓川を挟んで流れ落ちる須賀滝(写真下)は、江戸時代の初めに月山からおよ
そ8キロの水路を引いて造ったものだそうです。
神橋から先に進むとほどなく杉並木の中に溶け込み見過ごしてしまいそうに、ひ
っそりとたたずむ国宝・羽黒山五重塔が見えてきます。この五重塔は、平安時代
(900年代)に平将門によって建てられたと伝えられるもので、江戸時代初期に修
復され今に至っているとのことです。
石段の登り坂が続く参道を登りきると羽黒山山頂に到着です。
羽黒山は、蘇我氏の迫害から逃れてきた崇峻天皇の皇子である蜂子皇子によって
開かれた出羽三山の始まりになります。三山の神々を合祀する山であるととも
に、蜂子皇子が創立された羽黒派古修験道の道場にあたる所です。
月山、湯殿山は雪深い山頂や渓谷にあり、通年参拝が困難なため、羽黒山の山頂
に三山の神々を合祀しているわけです。
この三神合祭殿は、上の写真のように神仏習合時代の名残をとどめるような高さ
28メートルの萱ぶき木造、朱塗りの建物です。とりわけ厚さ2メートル以上とも言
われる萱葺屋根の重厚さは羽黒派古修験道の修行の厳しさを象徴しているかのよ
うです。
御朱印は、合祭殿で見開きでいただきました。
なお羽黒山山頂には、五重塔に次いで古い建物とである鐘楼とそこに中世以前で
は、東大寺の鐘に次ぐ巨大さを誇る大鐘があります。
また出羽三山は、先祖の霊魂を祀る山としての信仰を集めていて、霊祭殿には、
祖霊の鎮魂を求める人が絶えないそうです。
山頂部の一角には、芭蕉像が建ち、芭蕉が羽黒山を訪れた時に詠んだ「ありがた
や雪をかほらす南谷」の句碑が建てられています。
月山 (月山神社)
月山は、標高1984m、出羽三山の主峰として秀麗な姿でそびえ、その山頂に
月山神社があります。
月山には、湯殿山神社から登るコースなど様々な登山道がありますが、今回は羽
黒山山頂から月山高原ラインに入り月山8合目に到着、ここから月山山頂まで登
山道をおよそ2時間半かけて登っていきます。
8合目月山レストハウスから弥陀ヶ原と呼ばれる湿原を10分ほど登っていきま
すと、湿原の中に御田原神社があり、月山中之宮として須佐之男命の妻である奇
稲田姫神(クシイナダヒメノカミ)が祀られています。稲田の守護神として五穀豊穣・縁結びの
神として信仰されています。
修験道では、修験者(山伏)は死装束でもある白装束をまとって山中で荒行を行
い、擬死再生の思想の中で、一種の他界とも言える厳しい山中から帰還する(=
蘇る)ことによって法力を獲得するものと考えられていたようです。
このような、習わしの中で、今でも月山登拝では、白装束登る人が多いようです。
上の写真のような白装束で登っておられる方をこの日もかなり目にしました。
こちらでいただいた御朱印は、見開きの御朱印でした。
御田原神社にある鳥居をくぐると目指すは、山頂にある月山神社本宮になります。
弥陀ケ原は、海抜1400m附近につらなる湿原で、高冷地の為枯草が腐る事なく、
何万年となく積み重なってできた泥炭層で出来ていて、高山植物を見ることが出
来ます。またここには小さな湖沼が散在し、あたかも神々の御田を見るようであ
ると言うことから御田原(弥陀ケ原)と呼ばれるようになったそうです。
8合目から9号目は、比較的なだらかな大きめの石でできた岩場が続いていきます。
クマザサが茂り、また途中高山植物の群生地や雪渓もみられます。
あいにく雲が多めで遠望はかないませんでしたが、晴れ渡ると鳥海山や庄内平野
など眺望が素晴らしいところだそうです。
御田原神社からおよそ1時間で9号目、仏生池小屋に到着です。
9合目から山頂にかけての風景です。
9号目と頂上のちょうど中間部分に、未熟な修行者をここから返したと言う言い
伝えがある月山登山で最も急な岩場“行者返し”があります。
9号目から1時間15分、月山神社本宮がある月山頂上に到着です。
月山神社は、月山山頂(1,984m)に鎮座し、明治の近代社格制度では東北
唯一の官弊大社であった神社です。
祭神の“月読命”は、月を象徴する神として、夜、海、死後(命の再生、蘇り)の世
界をつかさどり、国土安穏、天下泰平、産業発展、五穀豊穣、大漁満足に霊験あ
らたかと言われています。
また祖霊安鎮の山としても崇拝されているのが月山です。
こちらでも見開きの御朱印をいただいてきました。
月山神社本宮は、特別な神域ということで、参拝者はすべてお祓いを受けてから
入っていきます。本宮内は、撮影禁止になっていました。
また山頂付近は、白い花を咲かす高山植物“コバイケイソウ”が群生していました。
湯殿山 (湯殿山神社)
湯殿山神社は、山形県鶴岡市田麦俣の湯殿山山頂にある神社です。
古来、出羽三山の奥宮とされ、修験道の霊地であり「語るなかれ」「聞くなか
れ」と戒められた神秘的なたたずまいを見せている所です。
湯殿山は、月山南西腹に連なるなだらかな稜線を持つ山で、月山山頂から登山道
を2時間ほど歩けば行ける所にあります。
今回は、鶴岡側から国道112号線、そして湯殿山有料道路に入り、大鳥居のあ
る湯殿山参籠所の駐車場に車を止め、そこから参拝バスに乗り換え、湯殿山神社
本宮に入りました。
湯殿山神社本宮は、月山から流れる梵字川の峡谷に鎮座し、温泉が湧き出る巨岩
が御神体と言う大変珍しい神秘的な神社です。参拝に際しても、靴を脱ぎ裸足に
なり、お祓いを受けてから本宮に入る事になります。また本宮全体が神域であ
り、大変残念ですが写真撮影はできません。下の写真は本宮入口になります。
なお祭神は、大山祗神、大巳貴命(大国主神)、少彦名神の三神になります。
御朱印は、こちらも見開きでいただきました。
なお湯殿山の修行の中には、“即身仏”(修行者が瞑想を続けて絶命し、そのままミ
イラになる)も多かったと言われ、一期千日と言われる想像を絶する荒行により
自らの穢れを祓い、そして体内の脂肪分をとり、即身仏となって他人の苦しみを
変わって受けようとしたんだそうです。目を閉じ雪に閉ざされた本宮を想像する
と、そんな清浄神秘な世界が浮かんでくるようでした。
本宮から大鳥居までの帰りは、バスに乗らず徒歩で15分ほどかけて下山してき
ました。下の写真のように、道のところどころに、様々な神様が祀られていました。
里の宮 湯殿山神社
里の宮湯殿山神社は、山形市旅篭町、山形市役所の近くに鎮座する神社です。
明治9年、初代山形県令三島通庸により、湯殿山神社本宮から分霊を勧請、県庁の
守護神として建立されたのが始まりになります。以後近隣の神社を合祀したり、
山形の「市神」を勧請、県都山形の鎮守として崇められている神社です。
湯殿山神社の神様のお使いは“牛”、境内に鎮座する「願い牛」は、子宝・安産祈願
に特別な御利益があると雑誌にも取り上げられたそうです。